はじめに

ここでは主に最近行ってきた/現在行っている研究について紹介します。過去の経緯については左の"これまでの経緯"ボタンをクリックしてください。

僕が一番興味を持って取り組んでいるのはBe/X線連星と呼ばれる一群の天体における相互作用の数値シミュレーションです。Be/X線連星は、Be星(B型輝線星とも呼ばれる大質量星で、自分自身が放出した物質が星の周囲に円盤状に分布しています)と中性子星からなるX線連星系です。軌道周期は十数日から約300日、離心率は0から0.9の間に分布しています(0.3-0.5の系が多いです)。大質量X線連星系の2/3以上を占める重要な天体なのですが、1980年代に提案されたモデル(現在では間違っていることが分かっています)を信じる研究者が未だに多く、そのために理論的な研究はあまり進んでいません。Be/X線連星の活動性、特にType IとType IIと呼ばれるX線アウトバーストの機構、を理解するには、離心軌道を描くために変化する重力場中でのBe星と中性子星の相互作用(例えば、Be星のまわりのガス円盤の成長と不安定化・Be星ガス円盤から中性子星への質量輸送、中性子星のまわりの降着流の構造と進化)を理解しないといけないのですが、そのためには大規模な数値シミュレーションが必要になります。

僕が用いているコードはMatthew Bateによって開発されたSPH (Smoothed Particle Hydrodynamics) 法によるコードです。 このコードをBe/X線連星に適用して、2001年以来、多くのシミュレーションを行ってきました。これまでの研究で、Type Iと呼ばれる規則的なX線アウトバーストの機構についてはほぼ理解できたと考えています(詳しくは、"論文リスト"中の論文を参照してください)。しかし、Type IIと呼ばれる大規模なアウトバーストについてはまだほとんど手がかりがないと言って良い状態です。今後、Be星ガス円盤における不安定性と関連づけたシミュレーションをして、Type IIアウトバーストが説明できないか調べていこうと考えています。

Be/X線連星系のシミュレーションに興味のある方は左の"Be/X Simulations"ボタンかここをクリックしてください[日本語で解説したものはないのですが、この記事(北大情報基盤センターニュースNo.8(2006年8月))が参考になるかもしれません]。一人でやってると仕事が全然はかどらないので、一緒に研究してくれる人を募集中です。

また、2007年2月からは大質量連星系における衝突恒星風のシミュレーションも始めました。これまでに行ったのは、エータ・カリーナ(宇宙で最も明るい星の一つ)、WR 140(ウォルフ-レイエ星とO型星の連星系)、LS I +61 303(マイクロ・クェーサーかそれともパルサー風かで議論になっている天体)に対するものです。まだ解析はこれからのものもありますが、ムービーをみるだけでも、衝突恒星風の3次元構造がわかり興味深いです。このトピックスに興味のある方は左の"Colliding wind simulations"ボタンかここをクリックしてください。

さらに、2007年夏以降、超高エネルギーガンマ線連星のシミュレーションも行っています。対象はPSR B1259-63/SS 2883(電波パルサーとBe星の連星系)とLS 5039(O型星とブラックホールか中性子星の連星系)です。この研究については、現在、論文にまとめようとしているところです。論文作成後、シミュレーションからつくったムービーをwebに掲載する予定です。

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