連星系の謎にスパコンで挑む

 

編集 本日は、北海学園大学工学部の岡崎敦男先生の研究室におじゃまをしております。岡崎先生は、天文学の恒星物理学がご専門で、北海道大学のスーパーコンピュータを使ってBe/X線連星系と呼ばれる天体のシミュレーション実験を行ってらっしゃると聞いております。本日は、星の話と、宇宙の研究にスパコンがどのような形で活用されているのかをお聞きしようと思います。本日はよろしくお願いいたします。 

岡崎 こちらこそよろしくお願いいたします。

編集 岡崎先生、私たちは正直宇宙のことがわからないものですから、基本的なところからご説明いただけますか。

 

太陽系ができるまで

 

岡崎 分かりました。では、宇宙の成り立ちから始めたほうがよいでしょうね。宇宙は今から137億年前に生まれたと考えられています。

編集 137億年?

岡崎 ええ、ここ数年の観測で、明らかになってきました。誕生直後の宇宙は火の玉のような状態でした。その頃にはまだ天体は生まれていませんでした。宇宙が誕生して4億年くらいたった頃、最初の星が誕生します。それらの星が集まって銀河が作られます。銀河というのは、光の速さで10万年ぐらいかからないと横切れない大きさの天体です。

編集 億年とか、万光年とか気の遠くなるような数字ですね。

岡崎 そうですね。銀河は1,000億個ぐらいの星を含む巨大な系です。そして、そのような銀河が宇宙に一斉に産まれます、それは、ビッグバンから10億年を経た時代です。星にも寿命があり、寿命の長い星は誕生して以来ずっと現在まで存在しているのですが、ほとんどの星は寿命が短くて、すでに死んでしまった星も無数にあります。例えば僕らの住む銀河系の星々はもう何度も世代交替をしています。空を見たら星がたくさん光っていますよね。でも、あの星々の間には、死んでいる星もいっぱいあるのです。そのようにたくさんの星が生まれては死に、生まれては死にということを繰り返すうちに、さまざまな元素が宇宙に存在するようになったのです。

編集 はあ...

岡崎 元素のほとんどは、星の中でつくられるのです。地球には鉄もあるし、カルシウムもあれば、炭素や酸素もある。そういうものは全部星の内部でつくられたのです。星は内部でさまざまな元素を合成し、死ぬときにそれらを周りの空間にばらまきます。ばらまかれた物質が銀河系の中にたまり、そして、今から50億年ぐらい前に、それらの物質を集めて僕らの太陽系が誕生します。つまり、私たちは、星たちの恩恵を受けているということになります。私たちのルーツを探っていくと、かつて死んでいった星々にたどり着くと言えるわけです。

 

星の相互作用

 

岡崎 死んでいった星々と漠然と言いましたが、その中でも元素をつくるという点で最も重要なのは大きな質量の星です。太陽は地球よりも30万倍も重いですから、僕らの感覚ではとても重いということになりますが、星の中では太陽は“軽い星”に分類されます。太陽より10倍以上重い星もいっぱいありまして、そういう重い星がさまざまな元素をつくるのです。僕が扱っているのはそういう大質量の星で、その周辺の相互作用を研究しています。

編集 死んだ星の相互作用?

岡崎 はい。もう少し説明しますと、太陽には兄弟の星が周りにいないですが、星のうちの半分以上は兄弟星を持っていて、互いに相手の周りを回っています。そのような星の系を連星系と言うのですが...

編集 互いに相手の周りを回る?

岡崎 正確に言うと、2つの星の系の重心の周りをそれぞれの星が回るということです。太陽系も実はそうで、ただ太陽が圧倒的に重いので、太陽系の重心と太陽の中心がほとんど一致しているので、太陽はほとんど動かないように見える。でも、太陽もほんのわずかですが、重心のまわりを動いています。通常、重心は星からずれていますから、互いにその周りを回っているのです。

編集 そうなんですか...

岡崎 重い星が進化すると、最後は爆発して死にます。それを超新星と言うのですが、太陽の重さの10倍以上あるような重い星が死ぬときは、もう大爆発をして砕け散る。そのとき、さまざまな元素を周りの空間に放出し、中心には芯が残ります。太陽の重さの2倍以下ぐらいの芯であれば中性子星(注1になって、太陽の重さよりも2倍以上あるともう支え切れなくて、ぐしゃっとつぶれて光も出てこられない天体になるわけです。これがブラックホール(2)です。2つの星の片方が重い星だった場合には、その連星系は中性子星とかブラックホールというものすごく重力の強い星を持つような系に進化するのです。実は、重い星ほど寿命が短くて、例えば1,000万年もあればそういう系になってしまいます。

編集 質量が大きいと寿命が短い?

岡崎 重いと燃料をどんどん使って明るく輝き、あっという間に死んでしまいます。あっという間にと言っても、1,000万年ぐらいはあるわけですが。でも、太陽が100億年生きるのに比べると遥かに短い一生と言えます。今、片方の星が中性子星かブラックホールになると言いましたが、例えば、中性子星というのは1センチ四方に10億トンぐらい詰まっているような天体です。10キロメートルぐらいの範囲に、地球の数十万倍の重さが詰まっているわけですから、ものすごく強烈な重力がある。すると、もう片方の星の物質を強い重力で奪い取るという現象が起こる。奪い取られた物質は、中性子星に向かってものすごい勢いで渦巻きながら落ちていきます。その速さは中性子星の近くでは光の速さに近くなります。そのような速さで渦を巻いているのですから、すごい摩擦がはたらき、渦はものすごく高温になります。すると、X線が発生して輝くのです。中性子星でなくブラックホールがあるときも同じです。このような星をX線連星系と呼びます。X線連星系で何が起こっているかということを、天文屋としては知りたいわけですが、星はなんといっても遠い。どんな大きな望遠鏡で見ても、点にしか見えない。そこで何が起こっているか調べるためには、計算機でシミュレーションを行って、その結果を観測と比較して、こういうことが起こっているのではないかと考える。それが僕の仕事です。

編集 ふむふむ。

 

Be星のガスの構造

 

岡崎 X線連星系には大質量星を持つものと太陽程度の小さな質量の星を持つものとがあるのですが、大質量星の場合にはほとんどがBe星と呼ばれる星だということが、1990年代から分かってきました。青白い高温の星をB型星と言い、B型星の中でも周囲にガスの円盤があるものをBe星と呼びます。このBe星というのが、僕のもともとの研究テーマで、研究をやっている人は世界で100人から200人ぐらいしかいないような、そういう分野です。

編集 世界に数百人ですか!

岡崎 はい、少ないでしょう?Be星を持つX線連星系をBe/X線連星系と呼ぶのですが、以前はBe/X線連星系に関する論文は、間違ったモデルを作ってX線の振る舞いを説明しているものばかりでした。そういう論文を読む度に、どうして最新のBe星のモデルを使わないのかと思っていました。1995年から96年にかけて在外研修でアムステルダムに行ったのですが、その時にスペインの研究者から、Be/X線連星系ではBe星のガス円盤はどうなっていると思うかという質問がメールで来て、中性子星による潮汐力によってBe星のガス円盤は途中で途切れているはずですよ、と当時考えていたことを述べたのです。

編集 潮汐力?

岡崎 潮汐力とは、地球であれば潮の干満を引き起こす月や太陽の重力のことです。月が海を引っ張る力は、月に近い側で強く、遠い側で弱いので、結果として、海は月に近い側と遠い側にふくらんだ形になります。連星系でも同じことが起こり、Be星のガス円盤は、中性子星に近い側と遠い側にふくらんだ形になります。結論だけを述べると、この効果はガス円盤の回転を遅くし、半径を小さくするように働きます。Be星のガス円盤はBe星から放出された物質が徐々に広がってできるのですが、中性子星による潮汐力が円盤を小さくしようとするので、まるでダムにせき止められた水のように、円盤はある半径を超えて広がれなくなるのです。そのようなことを返答したら、相手から「それは面白いから一緒に研究しよう」という提案があって、「じゃあ、やりましょうか」となった。彼は観測家で僕は理論家だったので、うまく分業ができて、5年間で3本の論文を共同でまとめました。それがこの分野に入ったきっかけです。

 

数値シミュレーションにより仮説を証明

 

岡崎 中性子星とBe星との相互作用の研究は、世界で誰もやっていませんでした。最初の数年間はシミュレーションをせずに、手作業でできそうな計算をやっていました。例えば、北大の計算サーバ(3)10時間もかからないような計算です。手作業と言っても、式を評価するためにある程度数値計算は必要ですが。でも1日もかからずに終わってしまう。それでも全く新しい領域でしたから、やることなすこと全部新鮮で楽しかった、もうやみつきです。そうこうするうちに、自分でもこれはシミュレーションするしかないと思い始めたわけです。図を見ていただくとわかると思いますが、中性子星とBe星の相互作用はかなり複雑です6枚の絵提示)。実は、2つの星の軌道は楕円を描いていて、遠ざかったり近づいたりしているので、相互作用の強さも強くなったり弱くなったりします。そういうようなことを全部入れて計算しないといけないので、もうこれはとても手作業の解析的な方法では無理と思い、自分でシミュレーション用のコードを作り始めました。作り始めて数カ月して、ちょうどまた在外研修で今度はイギリスに行けることとなりました。ケンブリッジ大学で、精密なコンピュータのコードを持っている人がいて、その人がコードをくれたんです。それで、それまで自分で作っていたつたないコードを捨てて、彼のコードを使うようになりました。その人自身はこの分野の研究者ではなく、星の誕生の様子を計算する研究者だったのですが、彼のコードを少し書き換えるだけで、Be/X線連星系にも使えたのです。そうやって計算し始めて、もうかれこれ4年半ぐらいになります。先ほど申し上げた通り、僕はBe星のガスの円盤のモデルをずっと自分で考えてきていましたけど、そのモデルは同じ分野のほとんどの研究者の使っているモデルとは違っていたので、本当に正しいかどうかは正直自信がありませんでした。ひょっとすると自分の人生はむだかもしれないという不安がいつもありました。ところが、シミュレーションをやってみると、これまで自分で想像していたイメージの通りにガス円盤が広がっていくのが見られたのです。あれは本当にうれしかったですね。

編集 研究者冥利につきますよね。

岡崎 その通りです。中性子星の軌道にいろいろな離心率を与えて、ガスの円盤がどこまで広がれるかを計算すると、96年以降スペインの研究者と一緒にやった計算の結果とピッタリ合う。見事なぐらい一致したのです。ああ、正しかったんだ、と思った。本当にホッとしました。同時に、シミュレーションで自分のこれまでやってきたことが正しいと分かるとさらに先に進めるわけです。今度は、Be星のガス円盤に対して中性子星の軌道を傾けてみようとか、中性子星へガスが落下する様子を調べてみようとか、もっと広い研究に着手しようと思うようになる。特に、センターに今回導入されたスパコンSR11000を利用すると、これまでよりもずっと解像度の高い計算ができるので、とても喜んでいます。

編集 新スパコンで初めてできたシミュレーションがあるのですね。

岡崎 そうです。1月から3月まで無料のお試し期間がありましたが、あれは本当にありがたかった。これまでだと、例えば、1/101/20の計算スピードでしょう。そうなるとたくさんの粒子を使って高精度の計算をしようとすると、ものすごく時間がかかってしまう。特に僕は研究費が少ないので、計算サーバで主にやっていて、それでONYX(4)が使えるようになってからはONYXでやっていたんですね。それらの計算機で、例えば半年以内に終わる計算をするとなると、使える粒子数は数万個程度でした。このような少ない粒子数だとBe星ガス円盤は調べられるけれど、円盤の物質が中性子星に流れ込むところを表現するには、全く解像度が足りない。ところが、50万個の粒子を使うと中性子星の降着円盤の解像度がぐっとあがる(図のパネル3-6を参照)。そういう意味で、系全体をちゃんと扱えるようになってきた。本当はこの数倍の粒子数が欲しいのですが...それでもようやく系全体を現実的に扱えるようになりました。

編集 つまり、新スパコンでかなりの精度で連星系の構造が表現できるようになった。でも欲を言えば、さらに性能の高いスパコンがあれば、ということですね。

岡崎 そういうことです。シミュレーションというのは説得力のあるものですね。僕は2001年からシミュレーションを始めたのですが、それまでは、BeX線連星系のガス円盤の仮説を誰も信じてくれなかった。でも、あるセミナーでシミュレーションを見せたら、みんな信じてくれるのです。本当にあのときシミュレーションというのは偉大だと思いましたね。言っていることは同じなのに、インパクトが全然違います。

編集 そうですか、ところで地球から一番近いところにあるBe星はどのあたりにあるのですか。

岡崎 カシオペア座のWの真ん中の星がBe星です。

編集 カシオペア座、そんな遠いところにあるのですか。

岡崎 遠いですか?光の速さでたった600年しかかからないところにありますから、天文屋の感覚では目と鼻の先にあるようなものなのですが...

 

今後の課題

 

編集 最後に、今後の研究の抱負についてお聞かせいただけますか。

岡崎 今申し上げたように、新スパコンによって研究は格段に進歩しました。でも、本当はもっと詳しく計算できないとだめだとも思っています。中性子星というのは非常に小さいもので、僕がやっているシミュレーションでは、中性子星の半径に比べて3万倍も大きなところまでしか追いかけられない。系全体はもっと大きいのです。だから、系全体を扱いながらも、できるだけ中性子星に近いところまで追いかけたい。そうすれば、X線放射のメカニズムもわかってくる。でも、そのためには莫大な数の粒子数が必要です。現在だと、僕は1ノードしか使っておらず、共有メモリ型の並列化(5)だけの計算なので、50万個程度の粒子数が限界です。50万個の粒子数をスパコンの1ノードで計算しようとすると、おそらく4ヵ月、5ヵ月、ひょっとしたら半年かかる。それでさえ、まだ中性子星の周りの円盤をちゃんと計算するには不十分です。少なくともその45倍の粒子数が欲しい。200万個から300万個は欲しいですね。

編集 そうですか。

岡崎 となると、今度はノード間の並列化が必要になりますね。分散メモリ型並列処理(6)による計算が必須です。だから、今年の努力目標は、分散メモリを使うようにコードを書き換えることです。分散メモリを使って4ノードとか8ノードとか使えれば、200万個とか300万個という粒子数の計算ができるようになって、もっとはっきりと円盤の進化が見えてくるということになります。これが当面の目標です。もっと長期的な目標は、僕は今、ガスだけを扱っているわけですが、現実の天体の中には磁場もありますし、星から光も出ている。すると磁場とガスの相互作用とか、星の光とガスの相互作用という要素が入ってくるわけです。そうなるともっと大変な計算になる。中期的には星の光、そして中性子星から出てくるX線の影響を含めた計算をしたいと思っています。さらに、その次の段階としては磁場の効果でしょうか。そこまでやって初めて現実的な計算になってくるわけです。だからそれで言うと、現在のスパコンがあと100倍速ければいいのですが...

編集 ムーアの法則を考慮すると,プロセッサの性能向上は15年で約2倍です。その78倍ですから、20年かかりますね。最短でも10年。やはり,分散メモリ型並列処理で、大規模化と高速化を実現することが必要ですね。

岡崎 実際、そこまでやらないと説明できない観測結果もたくさんあります。あと、最後にセンターへのお願いなのですが、先ほど申し上げた通り、計算には時間がかかります。そして、スパコンの性能がここまで上がってくると、どれだけ計算できるかは、スパコンの性能よりもむしろ自分自身の予算の金額で決まってしまう。だから、利用負担金の一段の低下をお願いしたいのです。あるいは、プロジェクトを募集していただいて、これは意義があると思ってもらったときには安く使わせてもらえるとか、そういうふうなことをやってもらえるとありがたい。具体的な話になりますが、僕は今、50万円のS50コースに入って、2つシミュレーションを走らせていますけど、これだと4ヵ月で予算を使い切ってしまう。残りの8ヵ月間スパコンから離れて、次年度に科研費があたればまた使うということになる。時には、中途半端なところで予算がつきてしまい、続きをやるために1年待つしかないという悲しい結果になるかもしれない。センターも苦しいとは思うんですが、その点をご考慮いただければありがたいのです(笑)。

編集 新スパコンと旧スパコンで、バッチ利用の演算サービス利用負担金は同じにしています。スパコンの性能は20倍になっているので、演算サービス経費ははるかに安くなっています。ユーザの皆さま方は、20倍のシミュレーションをもう始められているんです。高性能なスパコンを利用して、研究をもっと加速し、短期間にいろいろなことをやってみたいというお気持ちは分かるのですが...新スパコンは稼働率も非常に高いので、年度末に余裕が出ましたら、その分は来年度、例えば共同研究プロジェクトですとか、スパコン用シミュレーションソフトの開発とか、そういうことを予算化できたなら考えています。

岡崎 いいですね、期待しています。

編集 本日は、いろいろお話を聞かせていただいて、新しいスーパーコンピュータが岡崎先生の研究に大変役立っており、研究も新たな領域に入ってきたことをお聞きして、嬉しく思い、また、自分たちの責任の重さを改めて感じました。本当にありがとうございました。(了)

 

 

研究者紹介

中学生の時に、ガモフ「不思議の国のトムキンス」(白水社)を読み、天文学を志す。京都大学大学院理学研究科で宇宙物理学を学んだ後、1986年に北海学園大学に就職。専門は恒星物理学。大質量連星系における相互作用を、主に数値シミュレーションにより研究している。趣味はぼんやりすることと読書(特にSFとファンタジー)。兵庫県生まれ。

 

 

用語解説

(1) 中性子星: 質量の大きな星が爆発したあとに残る超高密度の天体。半径は10km程度だが、太陽と同程度の質量を有する。

(2) ブラックホール: 質量の非常に大きな星が爆発したあとに残る、極限まで収縮した状態の天体。あまりに強い重力のために光でさえ出てくることはできない。

(3) 計算サーバ: 情報基盤センター大型計算機システムを構成する計算機システムHITACHI Superdome (プロセッサ数32および主記憶容量64GB)で,ユーザの共有メモリ型並列処理および商用アプリケーション利用サービスを提供している。

(4) ONYX: 情報基盤センターグリッドコンピューティングシステムを構成する超高速可視化サーバSGIOnyx300(プロセッサ数32,主記憶容量16GB)で,共有メモリ型並列処理および高性能グラフィック機能を有している。スパコンでの大規模解析結果の可視化など,ポスト処理に威力を発揮している。

(5) 共有メモリ型並列処理: プロセッサごとに処理を分散して並列処理を行う際に,同一のメモリ空間を使用する処理。プログラムの並列化はコンパイラが自動的に行う。特に,新スパコンに導入されている日立最適化コンパイラはすぐれた自動並列化を実現している。

(6) 分散メモリ型並列処理: 新スパコンは演算装置(ノード)あたりプロセッサ数16および主記憶容量128GBを有している。大規模および高速処理では,複数の演算装置を利用して並列処理を行う。解析モデルを演算装置数で分割し,演算装置ごとに共有メモリ並列処理またはプロセッサごとに逐次処理を行うような並列処理のことをさす。解析モデルの分割面では演算装置間でデータの共有が必要になるので,MPIライブラリを利用する。特別なプログラミング技術を必要とするが,スパコン利用では必須の技術である。


スパコンを使ったシミュレーションの一例。中心に見えているのが、ガス円盤(黄色から青にかけての部分)に囲まれたBe星(白い円の部分)。Be星のガス円盤はある半径から外へ広がることができないが、中性子星が最接近した時には円盤から中性子星重力圏へガスが流出する(3)。流出したガスは中性子星の周りに降着円盤を形成し、渦巻きながら中性子星へと落ちていく(4−6)。Smoothed Particle Hydrodynamics法による計算。用いた粒子数は約40万個。